FICTION FUNCTION Ⅰ


「アイツ本気で、本気と書いてマジで誰なんや。」

「まぁ、私の結論から言うと、明智日向守光秀だよね。」

「あぁ、前世が?」

「否(いな)、事実として。Wikipediaにもあたったが、それで矛盾がない。」

「えーっ?!五百年近く生きてるってこと?」

「アレだけの早業持ってるんだぞ?遺伝子の発現サイクル?を物凄く遅くして、謂わば熊の冬眠状態に入り、寿命を、ぬぼ〜〜っと、ぬらりひょんと、引き延ばしに引き延ばし捲っている、謂わば、遅業を習得していたとしてもおかしくはない。」

「へぇ~〜〜。恐ろしい。」

「現代人って、スマホにテレビにビデオに本、ゆらゆら帝国の曲の歌詞はいってきちゃった、まあいいや、目と耳と脳なんかばかりを使って、しゅばばばばば、って、速さばかり競って、最近聞かないけど偏りが大きいもんね、なんて言ったっけか、実践が欠けている、ああアレだ、ガリ勉とか空手バカ一代、とかだよね、いや空手バカ一代は実践に偏っているかも知れないけど学習がどうかはわかんないけどそれは置いといて、自らがダッセーとかモテねぇぞなんて言ってバカにしている相手と本質的に同じ状態に、知らず知らずの内に、なっちゃっているもんね。遅業なんて、思いも寄らぬ概念だもんね。そもそも、そんな言葉というか、そんな単語は辞書に無いよ。書いて。」

「それでか。うわ〜。こわっ。」

「でもさ、おかしくないですか?南光坊天海は実は光秀だった、って説があるけど、ヨボヨボに萎れたお爺さんになってたんじゃないの?」

「まあ〜、その説を仮に事実だとすれば、細胞の新陳代謝、細胞分裂の際にテロメア部を長くする、そんなことが可能かはさておき、それが出来るのであれば若返りが可能だとは言えるだろうな。」

………

「なんでわざわざ、一旦年老いてしまわなくてはいけなかったのか。」

………

「それは、時の流れは止められないからな。彼の身の置かれた状況から、そうならざるを得なかった、のかもしれないし、まあそうだろうが、もしくはあるいは、老齢に至って初めて、その業を、得たのかもしれない。」

「と言うか、高僧は、見た感じ重そ〜な印象の、分厚い法衣に身を包んでいるだろう。その昔には、そんな高僧の身の近くに近寄ることは許されなかった筈だ。さすれば、実際に年老いていたのかどうかは、オモテに出ている顔や手を見なくてはわからない。今で言う特殊メイクを施してしまえば、大勢の目を騙すことは十二分に可能だろうよ。」

「う〜ん。どちらにしても、可能性ということで言えば否定できない。」

「いやいやいやいやいや、仮定の話でしょ?」

「まあそうではあるが。」

…………………

「まじかよオイオイ。可能性の話ではあるが、アイツ、明智の十兵衛だったんか。怖すぎる。お前、アイツになんかよざらんことしなかったか?因果応報喰らっちまうぞ。気をつけろよ、言動に。」

「あぁ、ヤバいかも知んない。二十余年前にアイツをいたぶった人間や裏で陰口や悪口を言ってその因果を現前とし悔い改めることの出来無かった者共が、超自然の力で腐敗没落して、何人も無残な最期を、つまり自然に見えるように死んでいっている。勿論、それは、必ずしも不改心が『原因』というわけではないかもしれなくはあるし、どちらかと言うと『条件』に中(あた)るのかもしれないだろうが、因縁ということで言えば、な。」

「二十年以上かけて復讐している、ってこと?」

「いや、そうではない。奴の中では復讐でも何でもない。復習だろう。どうしてそのような目に遭うことになったか繰り返し思考を積み重ね、終には完全にひっくり返したんだよ。事象の根本をな。」
……

「どういう意味だよ?」

「つまり………、分かりやすい例で譬えようか。」

「ええ、どうぞ。」

「テーブルにプラスチックのマグカップを置く。意図的に払い落とし、床に落とすとするだろう?落ちて、割れない。元の位置に戻すと、もと通り。」

「ええ。それで?」

「これが、陶器だったら、どうなる?」

「割れますね。もとに戻らない。」

「そう。つまり、割れたんだな。一巻の終わり。」

「あぁ。」

「原因は何だ?」

「落とそうとした意図だな。」

「結果は?」

「割れたマグカップ。散らばった欠片、へこんだ床。」

「……その割れたマグカップが、アイツってことか。」

「いや、割れなかったマグカップ、或いはプラスチック製のマグカップとかだな。」

「そう。生命なら、歩くなりテーブルの上に登るなりして、もと通りの位置に戻れるだろう?」

「そうやって、再び元の位置から、マグカップしているんだよあの者は。」

「マグカップしている、ってあんた、どんな言い方やねん。」

「まぁええやんか。」

「汚濁に塗れた敗北から、元通りの誇りを取り戻したんだよ。」

「よく分かった。」

……

「つまり、悔い改めザル者は、割れたマグカップ。二度と同じマグカップにはならない。つまり帰らない。生命ではなくなってしまって、物になってしまったからな。」

「どうしたらいいんですか?私の場合の、この不始末を。」

「弔いだろうよ。」

「十事正見、この3つ。
二、大規模な供養には結果がある。
三、小規模な供養には結果がある。
四、善悪の行為には結果がある。
これらを知って、不始末の滅びる方向に、善悪の悪の滅びる方向に、これらをおこなうことだろうな。」

「やり方がわかんないよ。そう言われても。」

「あの者はどうしているんだ、それについて。」

「さあな、先んじて済ませているのかもしれない。弔いとして、供花(くうげ)などを。それで、その供養を印(イン)として内在させそれを彼の者にとって相応しい所作に込めて、一瞬の動作で完遂しているのだろう。その所作は、全ての者にとって弔いでなくてはならないが、必ずしも外から見える必要はないからな。何もしていないように見える場面でも、見えない所で、肘や足の指や口の中や、そんな所で。」

「はぁ〜〜〜。そうなのか〜。」

………

「ヤバイよ。俺らも、そうなってしまうんじゃないか?あの人に対して行なった行為の因果から。」

「その因果から逃れる為には、あの者を亡きものとするしかないだろう。」

「いやそれは違うな。亡きものとすれば、新たな因果が始まる。どれだけの精霊たちが、あの人を支えていると思っているんだ。その精霊たちに依る復讐が、どんな力を持つか。」

「中には、あの人の悪口を言うことですら恨みに思う精霊たちもいるだろうし、仲間内でのあの人に対する陰口やおちょくりすらムカつくと感じる精霊たちもいるだろうし、その精霊たちの中には最悪の悪霊と霊界での世間上の付き合いで親しくしているものもいるだろうし、」

「それはドストエフスキイの悪霊か?」

「まあそれだけじゃなくて他にも色々いるだろうが、それで遠回しに頼みを聞いてもらう、なんてこともあるかもしれない。」

「それで?」

「たとえば『マッチャリヤ』の悪霊もいるだろうし、」

「つまり?」

「吝嗇の悪霊、吝嗇思考を説得力をもって吹き込むんだよ。ケチに理があるとその対象者に思い込ませる力を持っているんだな。」

「それで?」

「それで、『あの人を傷つけた者を絶対に許さない』と、強い怨念がそのままカタチとなった霊もいるだろうし、まぁ色々いるだろう。」

「そうかぁ。そりゃ、もう何というべきか、ヤバイ邪念に頭の中を支配されてしまうだろうな。」

「少なくとも、直近の未来で、無事じゃ済まないだろうな。」

「でも、反抗心からあの人に対して勝利者となろうとする者も、いるかも知れなくない?」

「何を勝利と定義するか、だな。」

「先程見たように、殺しても、殺したものは、わかりやすい言葉とすれば、呪われる。それはあの者に憑いている精霊の力によって。それは、あの者を転落させた事実としては、勝利に見えるかもしれぬが、一瞬ののちには、己の敗北の始まりとなるわけだ。」

「殺したくても、殺した結果は、我が身の滅びの始まり、ということか。」

………

「そこで、滅びたい人間が出てくるかもな。」

「八百万の精霊たちがあの者の味方なのだぞ?勝てると思うか?」

「人目のない場所に連れて行けば、或いは可能かもしれんが、至る所に監視カメラはあるし、その道中で足がつく。ほぼ不可能だよ。」

「無理ですね。」

「じゃあ、諦めよう。」

「お前そっち側かよ。」

「いやいや、そうではないけども、ついつい、考えちゃったな。」

「でもこれで、後顧の憂いなく、他のことを考えることができるじゃん。」

「そうだな。」

「いや……どこに潜んでいるか、わかったもんじゃねぇぞ?無敵の人が。」

「しかし、滅びたいなら、もうすでにして、ほろんでいるよね。」

「滅ぼされたい、って歪んだ意思を持つ場合もあるかもしれないな。」

「そうだなぁ。でも、何のために?あの人を滅ぼした人、という名誉?名目?名目GDP?」

「キミにはホントホッとさせられるわ。流石やな。」

「名誉に価値を見出せば、そうなるかもしれぬ。しかしながらそれは、自分の中の、ひいては世の中の、つまり、世の中に存在すること、を踏まえた上での、価値だろう。であるからして、そのような美学を持った場合、もっと色々、価値あると感じるものが見えてくる。そちらの方に惹かれて、愉しむほうにいくんじゃないかな。ゆうても、見た目は、あの人はただの人だからな。あの人を対象にしてなんやかんやどうにかしたって、他の人をそうすることと等価値だよ。」

……………

「はぁ〜〜〜〜〜っ。ダッセー童貞だと思ってたけど、実際はとんでもねぇエロスなんじゃねぇの?セクシー部長ばりの。」

「見えねぇ〜w」

「あんなきたねぇ顔して、オンナっ気しないけど、裏ではザギンでナオンとさぁ、組んずほぐれつやってんじゃねぇの?」

「オトコは顔じゃねぇ、中身だ。ってことか。」

「RHYMESTERのリスペクトの歌詞だね。その好例が、いや、そのままにすら聞こえる。山ちゃん、南海キャンディーズの山里が蒼井優と結婚したでしょ。まあ、全くそのとおりに言ってるのではないことは、よく歌詞の内容を聞けば分かるけど。だいたいノストラダムスの予言にしてもさ、予言詩の解釈なんてさ、なーんか拡大解釈しすぎててさ、何とでも説明出来るような大雑把すぎること言ってるもんね。」

「おっそろしい欺きっぷりだなぁ。」

「うわ〜、うらやましい。マジか。マジカマギカ。マジマギかっつの。」

「アイツがMagiaの君らしいし。」

「いや、シュタゲのハッキング・トゥザ・ゲートの『あなた』じゃ?」

「ぱにぽにだっしゅ!の姫子も名乗っていたけど。」

「『太陽曰く燃えよカオス』だろ。」

「あぁ、それな。」

「メンド。追いつくの大変だね。」

「倍速で観たって、理解できるわけ無いし。」

「これもまた、一朝一夕では身につかない刻苦勉励の積み上げ、学問の成果を踏まえて執り行った誠実かつ真摯な臥薪嘗胆の贈り給いし賜物、ということか。」

「アニメも学問になるのか。」

「そりゃな。熱狂的なファンが大勢いるということは、それだけの魅力を持っている、何よりの証拠だからな。その理由を解明しようとすることは、立派に学問たるだろうよ。」

「なるほどなぁ。」

「まぁ、個人情報保護法が施行されて長いことでもあるし、個人の行動を暴こうとすれば、施行後の行為については、後々法による裁きから逃れることはできないだろうな。遡及処罰の禁止という法の原則があるため、法による裁きはその法が施行されたのちからこちら、ということになるがな。ここのところの、フジテレビなどのToLOVEるのように。」

「予測変換の罠。」

「フシダラなもんだねぇ。予測変換なんて、これ使う率が高い奴らが多いから、こう出ているわけで。」

「まぁ、『法に依らない裁き残し』 については、どうなることやら、と言うしかないかもしれないが。」

「まったくなぁ。相手は、あの、鬼武者だってゆうのに、呑気なもんだよホンマに。」

「マルデダメオやな。可哀想に。」

「惟任 (これとう)が、姓名の姓でもあったからなぁ。これ、問う。これを問う。そういう意味かもな。」

「あーあ、やっちゃった。かもな。」

<了>

(『存在がマグカップしている。』というアイデアについての参考文献: 河合隼雄氏と村上春樹氏による対談、書名は不明)

これが、軍議の様子であった。
どういう軍議?
そりゃ、風雲たけし城でのある場面におけるある局面について当時における場合の、軍議だよ。

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なんでやねん。